ピピピピピピピ・・・・・。
携帯電話が鳴っている。
「誰だよこんな朝っぱらに。優か。まったく。」
優というのは、俺の親友。小学校から今の高校まで一緒の幼馴染だ。
「勝、大変だ。えらいことになった。」
「一体どうしたっていうんだ。お前なんだか、声妙に高いぞ。女みたいじゃないか。」
「そのまさかだよ。俺、朝起きたら女になっちまった。」
「いや、お前寝ぼけてんのか?AVばっか見てると頭が腐るぞ。」
「嘘じゃないって、うわ〜、どうしよう。」
電話でそのやり取りはとても俺をからかってるとは思えなかった。
だけど信じられるわけがない。男が女になるなんて。
とりあえず、俺達は町外れの寂れた神社で待ち合わせることにした。
「おせぇな。もしもこれが嘘だったら承知しないぞ。」
(勝、勝。)
後ろの方で声が聞こえたので振り返ってみると、そこにはコートを着た1人の女の子が。
(うわ〜、誰だろ。可愛いな。)
そう思っていると、
「俺だよ勝。そんなにじっと見られると恥ずかしい。」
「は?・・・、ええ〜!、本当に優か!?」
「だから本当だって言っただろ。俺、女になっちまった。」
最初は半信半疑だったが、この姿を目の当たりにすると信じざるを得ない。
リボンで整えられた長い髪、俺より低い背、顔にほんの少しその面影が残っているだけで、
前の男の優とは明らかに異なっていた。しかもかなり可愛い。
俺はぽ〜っとその可愛い少女をみつめていた。
「だから恥ずかしいからあまり見るなって。」
「あっ、ごめん、ごめん。」
その恥ずかしそうに頬を赤らめる姿も可愛い。前のむさい男とは大違いだ。
取りなおして話を聞くと、どうやら、朝起きると女になっていて、びっくりしたこと。
前触れと言えば、昨日急に酷い頭痛に襲われてベッドに倒れこんだことだけらしく、
他に思い当たる節はないらしい。
そして、朝起こしに来た優の母はびっくりして病院に連れていったが原因はわからない。
優の心配はよそに、優の母は、待望の女の子の突然の誕生に喜んでいること。
だそうだ。

「そういえば、お前なんで夏にコートなんて着てるんだ?脱げよ。」
「いや、これはあの〜・・・。とりあえず脱ぐわけにはいかないんだ。」
なんだか挙動がおかしい。そこで俺は無理やりそのコートを脱がした。
「おい、やめろって、うわああああ。」
そこに現われたのは赤いワンピースに包まれた華奢な肢体と、
服の上からでもはっきりとわかる胸のふくらみだった。
思わず俺はごくりとつばを飲んだ。なんだか胸がどきどきする。
「お前、嫌そうなこと言ってたけど結構女の姿気に入ってんじゃないのか。
そんな可愛い服着て、そう言えばリボンで髪もちゃんと整えているしな。」
「違うよ。これは母さんが昔の服引っ張り出してきて無理やり俺に着させたんだ。
女の子は可愛くしなさい。てな具合に。たく、俺は男だっていうのに。」
優の母がそういうのもわかる。なんだか今の優にいつもの格好をさせるのは
少しもったいないような感じがするからだ。しかも、赤いワンピースがより
妖美に優を引き立てているような気がした。
「あっ、もうこんな時間だ。俺、もう帰らなきゃ。」
「えっ、もう帰っちゃうのか。」
なぜか俺はいつも以上に優と一緒にいたいと思った。
「母さんが生き生きしてさ。これから一緒に買い物に行くとこ。
なんでも娘と一緒に買い物をするのが夢だったんだってさ。」
そういって、優は走って行った。
そしてその夜。
(なんだろう、優のあの姿を思い浮かべると胸がどきどきする。)
俺は一晩中優の姿が頭から離れなかった。そして胸がどきどきする。
その感情がなんであるかを考えながら、夢の世界に入っていった。

次の日、俺は商店街をぶらぶら歩いていた。
昔は駄菓子屋や、豆腐屋が並ぶ少々古臭く、客足も少ない商店街だったが、
数年前、市の計画ですっかり改装され、今ではお洒落な店も建ち並ぶ、
活気のある商店街となっている。
「彼女〜、君可愛いね。ちょっと俺達とお茶しない?」
「えっ、ちょっとこれから用事があるんでお断りします。」
どこかで聞いた声だ。
俺はそのやり取りがする所に近寄ってみた。
「本当は用事なんてないんだろう。別に変なことなんてしないから、
ちょっとだけつきあってよ。」
そこには、男達にナンパされて困っている女の子=優がいた。
「困ります。俺、本当に用事が・・・、あっ、遅いぞ。何やってんだよ。
早くしないと、時間間に合わないよ。さ、早く行こ。」
優は俺を見つけると、助かったとばかりに腕にしがみついてきた。
「ちっ、彼氏持ちかよ。つまんねえの。」
「おい、これはいったいどういうことだ。」
「頼む、友達を助けると思って、少し我慢してくれ。それに女の子と
こうして歩けるなんて幸せだろ。」
「な、何言ってんだ全く。」
そう言ったものの、急に優に密着されて、俺は思わず赤くなってしまった。
シャンプーの良い香りのする長い髪が首筋をさらりと撫で、
胸のふくらみの感触が腕に伝わってくる。
その細く、華奢な体は、優が元男であったとは到底思わせないほど、女の子らしかった。
(やべ、なんか心臓がどきどきしてきた。何やってんだ俺。優は本当は男なんだぞ。
そりゃあ、今は女の子になってはいるけど・・・。)
「なんか顔が赤いぞ.大丈夫か?」
「ちょ、ちょっと今日は暑いかな。」
俺はごまかしながら、その場をおよそカップルのように立ち去った。

そして、少し離れた公園にまで来ると、
「いや〜、助かったよ。あいつらにからまれてて大変だったんだ。」
「お前、なんで1人であんなところにいたんだよ。もしかして女の姿に慣れちまったか?」
優は昨日の派手な赤のワンピースと違い、白いワンピースを着ていた。
なんだか、清潔感に溢れていて、これはこれで可愛い。
「違うよ。母さんに無理やり連れてこられたんだ。学校に行くのに必要だからって、
指定の制服を買ってたんだ。で、俺置いて先帰ったんだよ。」
(女の優の制服姿か、見てみたいな。)
俺は何かいけないことを考えている自分を戒めて、話題を変えた。
「えっと、優。どうするんだこれから。もう帰るのか?」
「う〜ん、そうだな。たまには勝の家でも行ってみるか。母さんが帰って来るまで
鍵開いてないし。」
「俺の家!?」
現在、俺は親の仕送りを受けて、念願のアパートでの1人ぐらしを始めている。
当然、アパートの部屋では優と二人きりとなる。
「いや、それはちょっと。」
元男だったとはいえ、今の優は女だ。あまり女の子と縁がない俺は、
この提案に少しためらった。
「ほら、ぐだぐだ言ってないで、早く行く。」
そういって、優は俺にいたずらっぽく微笑んで見せた。
その仕草、笑顔は可愛らしく、俺は結局押し切られてしまった。
俺はもうすっかり優の魅力の虜になってしまったのかもしれない。
(俺、何やってんだろ。)

急に雨が降り出して来た。
今日の天気予報では確か降水確率が10%だったはずなのに。
「やれやれ、天気予報なんてあてにならないな。優、走るぞ。」
俺達は大急ぎでアパートへと走って行った。
雨足はとても強く、俺達がアパートへと駆け込んだ時にはすでに
俺と優は全身びしょ濡れとなっていた。
「やれやれ、びしょ濡れになっちまったな。」
「へっきし!」
服に染み込んだ雨が急激に体温を奪ったのか、優は少し寒そうに震えている。
「おい、風邪なんてひ・・・。」
雨で優の服が肌にぴっしりくっ付いており、さらに外側から下着が透けて見えていた。
白いワンピースであるために、色や形までも鮮明に映し出されている。
(黒・・・か。結構派手な下着身に着けているな。)
水に透けてくっきり現れているその肢体に見とれていると、
「うっ、恥ずかしいからあんまり見ないでくれ。」
頬を赤く染めて、優は体を隠すように座り込んでしまった。
自分では男のままのつもりでも、やはりこの姿は恥ずかしいらしい。

「ほら、俺の服貸してやるから着替えてこいよ。」
「うう、有り難う。」
優にタオルと服を渡すと、さっさとトイレに駆け込んでいって行ってしまった。
(もう少し、見ていたかったなぁ。)
そう思いながら、自分の着替えを済ます。
一向に止まない雨。とりあえず優は服が完全に乾くまで部屋に留まることになった。
時間つぶしにつまらない痴話話を延々としていたが、気がつくと優は色々あって疲
れているのか、うたた寝を始めていた。
・・・・、優はすうすうと安らかな寝息を立てて眠っている。
ソファに散るその美しい黒髪、触れるとすぐに壊れてしまいそうな華奢な体、
透き通るような白い肌、そしてあどけなさが残る可愛い寝顔は、元が男であったこと
を微塵も感じさせないくらい可憐だ。
(かわ・・いいな。)
胸の鼓動が激しくなる。俺は目の前の少女が愛しくて愛しくてたまらなかった。
俺はふっと、優の顔の前に顔を近づけると、そっと口付けをした。
唇を重ね合わせると、今まで体験したことのない幸福感が俺を満たす。
(もっと、もっとしたい・・。)
・・・・・、キスが長くなる。気がつくと俺は口内に舌を進入させていた。
クチュッ、クチュッ・・・
優の舌を絡めるように舌を動かし、その度に口の中で唾液が混じるような淫らな音が響く。
「んっ・・・。」
さすがに苦しくなってきたのか、優は喉を鳴らして息をしようとしている。
しょうがなく俺は、一旦優の唇を犯すのをやめた。
「んは・・・、はぁはぁ。」
唇を離すとき、優から甘い声が漏れる。
この淫らなキスですっかり興奮しきっていた俺は、その淫猥な声に触発され、
思わず胸に手が伸びる。
リリリリリン!
突然、優の携帯がなった。
それに驚いた俺はさっと優から離れた。
「ん、寝てしまったか。ふぁぁ。」
その音で優は起きると、まだ眠り足りないのか、眠い目をこすっている。
「うん、なんだこれ。汚ないなぁ。勝、俺よだれ垂らして寝ててたのか?」
「ああ、うん。」
(言えねぇよなあ。さっきまでお前にキスしてたなんてな。しかも舌まで入れて。)
そう思いながら、俺は何事もなかったかのように振舞った。

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